Little AngelPretty devil
           〜ルイヒル年の差パラレル

      “すったもんだの十五夜お月様”
 


今年は19日がお月見の“十五夜”で、
しかも丁度“満月”だったんだって。

 「え? お月見って満月だから
  “綺麗ねぇvv”って皆で観るんでしょ?」

 「いやまあ、主旨はそうなんだがな。」

  考えてもみな、
  実は一年て365日だったんですと
  判る前の暦で決められた代物だぞ?

  ???

  だからだな…。

ヒル魔くんから、
昔の農作業用のカレンダーの、
節目の行事の一つだったんだよって教わって。

 「そんな大昔の天文学なんだ。
  精密な望遠鏡もないし、
  ぐるっと回って一年てのが、
  いつからいつなんだろってのも
  まだ手探りだったんだぜ?」

 「ほやぁ〜〜。」

なので、今の観測で割り出された厳密な満月の晩と、
暦の順番で今年はこの晩となってる“十五夜”が
かっちり重ならない年もあるんだよって。
むしろ、そんな何百年も前の技術なのに
こうまで誤差が少ないのって物凄いことなんだって。

 “そいだけ何でも知ってるヒル魔くんでも、
  葉柱さんが、今
  誰のこと一番好きかは判らないのっておかしいよねぇ。”

そんなあんまり遅くならずに、
お月様がお屋根の上のお空まで昇ったので、
近所の大川の河原で、
シート敷いてお団子とお弁当広げて“お月見の会”したのね。
お弁当はセナのママとヒル魔くんチのママが作ってくれて、
お団子はヒル魔くんとセナとで、葉柱さんチで作ったのvv

 『おおい、菜箸がないぞ。』
 『ちょおっと待て。』

ヒル魔くんが“キッチンクラッシャー”なのは相変わらずで。
ボウルと泡立て器か木べらと、セイロとすり鉢とスリコギと、
お粉とお粉(上新粉とカタクリ粉)とお砂糖と、あとえっと?
そんだけで作れるはずなのに。
何でか、お玉や菜箸や、
おナベも山ほど片っ端から何しか使いまくってて。
葉柱さんも、注意するよか言うこと聞いた方が早いからって、
片っ端から渡される使用済みのをてきぱき洗って
“はいどうぞ”って さっさか渡し返してる鮮やかさ。
アメフトのボールとか、バイクのハンドルとか、
豪快に操るトコしか知らない人はきっとビックリするよ?
小さめのデザートスプーンとか柄の長いパフェ用スプーンとか、
指の間で手品師さんみたいにクルンクルンて回して、
あっと言う間に洗っちゃうのvv

 「おお、これは綺麗なお団子だねぇvv」

涼しい風の吹く中、ご近所から出て来た人が他にもいる河原で、
シート敷いて座ったのが、
セナとヒル魔くんと、進さんと桜庭さんと葉柱さんとで。
ススキは まだそんな生えてなくって、
しょうがないなぁって
グラスファイバーの束が噴水みたいになってるお飾りに
バッテリコードつないだのを飾ったヒル魔くんだったのが、

 「…う〜ん、さすが今時っ子。」

何か桜庭さんに微妙な感心されてたんだけど。(笑)
お重箱開いてご飯食べるのって、
何か運動会みたいだねって言ったら、
そいや、今年のは
王城大や賊学大の試合に
重ならないネよかったねって話になって。

 「いい加減、
  小学校の運動会なんて観に来るの退屈だろに。」

何でそんなものがあったんだろ、
食べるラー油を乗っけて
お団子食べてたヒル魔くんが そんなことゆうのへ、
おやと、葉柱さんが切れ長のお眸々をちょみっと瞬かせると、

 「何だ、今年は勝てる自信がある競技ないのか?」
 「違げぇって。」

 誰もそんなこと言ってねぇだろ。

 お前の場合、
 腹のうちが言った言葉づらの通りとは限らんだろが。

 そこまで判ってんなら、
 サボらせる方向の何かねぇのかよ。

 義務教育のガキを攫うほどお馬鹿じゃねぇんだな、まだ。

 ケチっ。

 「……桜庭さぁん。セナ、日本語判らなくなったよぉ。」

 「ああ、はいはい。そんな涙目にならないの。
  進もそこまで限界目指して首傾げてないで。
  ほらこっちのピカタも美味しいぞ?」

このところの毎度のことながら、学校行事なんか退屈だから、
当日何とかサボれないか、
高度な専門用語で“バックれられないか”と、
葉柱さんをせっついてたヒル魔くんだったらしくって。

 “なぁんだ、そういうことか。”

ヒル魔くんが無茶ばっか言うのはいつもの事だけど、
それは無理でしょというよな度合いが
どんどん凄くなって来てるのは、
ここ一番で言うこと訊いてくれないのは、
俺が一番じゃないからなんだなんて、
好きな人を試しているからなんじゃないかしら。

 「…………セナくん?」
 「だって、
  ファンタナの相談のコーナーに載ってたも〜んvv」

小学生むけファッション誌の読者のページに
そういうお悩み相談の欄があるらしく。
当事者二人が、ごちゃごちゃ言いつつ
近所のコンビニまで飲み物の追加を買いに立ってったその隙、
そんな爆弾発言してくれた王城のマスコット様だったのへ、

 “……セナくんも実は、
  ヨウちゃんの影響かなり受けてないか?”

少なくとも、こぉんな恋のさや当て系の機微には
全然通じてなかったはずが。
こんな即妙なことを言うよになってるとは。

 “進に注意しなきゃと言っても通用しまいしなぁ…。”

何をだと
まずは彼への気が遠くなりそうな説明が要ること。
しかも、複雑にして繊細なお話だけに、
電子機器を握り潰さぬようになるよう
お不動様を躾ける方が簡単かも知れぬ
苦行に他ならず。(おいおい)
おませさんになるのが悪いとは言わないが。
つか、ヨウちゃんレベルにはまだ程遠いんだし、
あの二人のごちゃごちゃを、
ちゃんと把握出来てる慧眼は大したものだし…。

 “うん、このまま相談相手になれるよう、
  育ってもらった方がいいかもね。”

ねえ、そうでしょ?と
桜庭さんが見上げた夜空には、
えっ?そんな急に言われてもと、
慌てふためきたそうな満月が、
聞こえてませんと しらを切りたいか、
素知らぬお顔で浮かんでたそうな。





     〜Fine〜  13.09.21.


  *何のこっちゃなお話ですいません。
   子ヒル魔くんも多感なお年頃なので、
   葉柱さんの気持ちを確かめたがってないかなとか思いまして。
   そして、そんな彼なのを
   意外や意外、
   セナくんがうっすら気づいてたらいいなと思ったもんで。
   いろんな方向へ失礼なこと言ってすいません。(おいおい)


めーるふぉーむvv
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